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第3章 聖なる石と空の十字架




 コケーッ!!
 ――と、露天甲板で、アレクの言う「白雪以外の女」がたかだかと鳴いた。
 甲板の中央あたりにはボートが並べられており、かぶせられた帆布をめくると、木造の籠がずらりと並べられている。その中に「白雪以外の女」たちはたむろしていた。ふっくらとした身体つきで、清潔な白い羽毛が綿毛のように見える。
「どうだ。こいつら全員、女の子だぞ?」
 なんとも言えない顔をしている白雪を、隣から見下ろしつつ、アレクが「どうよ?」といった口調で訊いてくる。
「…………ニワトリじゃないですか」
「ニワトリだけじゃねえぞ? ガチョウだっている」
「どっちでも結局、人間の女の子じゃないのは同じでしょう」
 期待して損した。白雪は、ため息をついてうつむく。
 このあたりは南方の外洋にさしかかっているそうだが、夜明けの空気はやはり肌寒い。
 そんな中、寝起きでかったるいのにわざわざ彼女を引っ張ってきたアレクは、シケた反応がお気に召さなかったようだ。
「おい、白雪」
 なんですか。
 と答える前に、ぐっと腕をつかんで立たされた。何事? と目をぱちくりしている間に、今度は胸元に抱き寄せられる。
 今は無人でも、他の船員がいつ来るかもわからない甲板で何を血迷ったのかと、うろたえるあまり反応が遅れた白雪の身体を、アレクは両腕でしっかりと支え――
「ひゃあ!?」
 ――まるで三歳の子供をそうするように、かるがると抱き上げた。
「ったく、また色気のねえ悲鳴だな、おい」
「だから、色気があったら逆に問題だと言ったはずじゃ……!」
「こらこら、じたばたすんなよ。落っことしちまうだろ」
「というか、むしろ降ろしてください!」
 いきなり視点の高さが変わった驚きと、つかまるところがアレクの肩くらいしかない不安と、慣れない密着の相乗効果で、白雪は激しくうろたえた。
 こんな子供を可愛がるような扱いは――それこそ実の父にすら――されたことがないせいなのか、冷静さがなかなか取り戻せない。こんな男を相手に、あたふたしたところなんて見せたくないのに。
「だいたいあなたは、なんのつもりでこんな――ぅわ、……ッ!」
 ちょうどそのとき、船腹に力強い横波がぶつかって、オライオン号がそれまでより大きめにかしいだ。アレクの頭越しに見えた海面に本気で落下しそうな気がして、白雪はとっさに彼の肩にすがりついてしまう。
「それでいいんだよ。大人しくしがみついてろって」
「……勝手に抱き上げておいて、偉そうに言わないでくれませんか……」
「怒るな、絶対に落としたりしねえから、な?」
 そういうことを言ってほしいのではない。
 が、やたらに偉そうな宣言どおり、アレクの腕は、しっかりと白雪を抱き支えている。
 シャツ越しに感じる無駄のない筋肉の張りが、ふいに胸に迫ってきて、白雪は不覚にもどきりとさせられた。
 ――細身に見えるし、普段は悪ガキみたいでも、彼はやはり潮風で鍛えられた大人の男性なのだと、改めて認識させられた気がして。あくまでも「男のフリをした女」でしかない自分との決定的な差を、肌で直接教えられた気がして。
 なんとなく憮然としている白雪をよそに、アレクは腹立たしいほど平然として言う。
「白雪」
 夜明けのやわい風が、帆を走る音がする。そこに穏やかに重なる波音が、耳をうつ。
 海の音しかしない世界の中心で、アレクは、彼にはめずらしい穏やかな声でうながした。
「船長命令だ。そのまま黙って、周りを見てみろ」
「周り……?」
「黙って、と言っただろ」
 意味不明だが、これ以上逆らって朝から消耗しまくるのもばからしいので、白雪はぶすっとした顔でだが言うとおりにした。
 ――周り、って。
 甲板には、先ほどのボートをはじめ、いろいろなものが置かれている。いくつもの滑車を挟んだ黒っぽいロープが、マストから甲板のあちこちへと縦横無尽に張られている様が、まるで複雑なあやとりのようだ。
(物はたくさんあるけど、船長の部屋みたいにごちゃごちゃはしてないな……。ちゃんと整理されてる)
 白雪はそのとき、はっと気がついた。
 ――こんなふうにオライオン号の露天甲板をちゃんと見渡すのも、潮風に身をまかせるのも初めてだということに。
 最初に助けられて甲板に引き揚げられたときは、とてもそんな余裕はなかったし、昨日一日は男装にまだ自信が持てなかったため、船員たちが絶えず動きまわる甲板を歩く度胸がなく、医務室と船長室にこもりきりだったから。
 それに……海。
 朝の澄んだ光が、夜闇の中では判然としなかった空と海の境をあざやかに浮かび上がらせている風景に、白雪はほう、とため息をこぼした。世界の始まりを見た気がすると言ったら、大げさだろうか? けれど、みがかれた鏡のように輝く太陽を見ていると、白雪の胸の中にも同じくらい明るい光が灯ったような、わくわくとした心地になる。
(……きれい)
 そして気づいた。
 甲板の舷側[げんそく]には鉄でできた二重の柵のようなものがそびえており、小柄な白雪では、その向こうを除くのは困難だ。長身のアレクに抱き上げられたからこそ、こんなふうに、その雄大さを身体いっぱいで感じられるほどに海をたっぷりと見られるのだ。
 気づいたが、アレクを相手に素直に感謝するのは少しシャクで――
「どうだよ。悪い気分じゃねえだろ?」
「…………あなたに抱きかかえられてなければ、もっといい気分だったと思います」
「この野郎」
 ――つい、可愛げのない物言いになってしまったけれど。
(南洋って、わたしの国の海より、青が明るいような気がするな)
 朧姫に付き従って船に乗ったことなら何度もあるが、こんなふうに、ただ海に見とれたのは初めてかもしれない。敵の船影がないかとか、嵐の気配はないかとか、とにかく神経を張りつめてばかりで、海そのものの色を楽しむ余裕などなかったから。
 ほんのりと頬を紅潮させて、一心に海を見つめる白雪の表情は、この船に拾われてから一番やさしいものだった。口元が、野の花が咲くようにほころんでいる。
 本人はまったく気づいていないが、彼女を抱えているアレクには、そのまぶしい表情がしっかりと見えていて。
「……ったく、心配かけやがって。そういう顔もできるんじゃねえか」
「え?」
 白雪は目をぱちくりさせた、風で帆が鳴る音のせいで、アレクが何を言ったのか、よく聞こえなかったのだ。
 きょとんとして白雪は視線を落とすが、アレクはなぜか逆に、ぷいと目をそらしてしまう。
 いつでも不遜な彼らしくない態度に、白雪はきゅっと眉根を寄せた。
「今、何か言いませんでしたか?」
「なんでもねえよ」
(……なんでもないって顔じゃないと思うんだけど……?)
 怒っている風ではないけれど、むくれた表情で、さっきまでの余裕がないのは気になる。
 指摘してやろうとしたのに、アレクはその気配に気づいたのか、まるでさえぎるように口を開いた。そして唐突な話を振ってくる。
「おまえってもしかして、親父さんにこういうことをしてもらった経験はないのか?」
「え……? それは、ありませんけど」
 白雪は虚をつかれつつ、あっさり即答した。……即答した後で、自分で言った内容に寂しさを感じるのが、なんとも間が抜けている。
 わずか15歳で巫女姫を守る御庭番衆の頭領を継いでからずっと、父の人生はお役目に捧げられていた。母は、白雪を生んで間もなく亡くなっていて――たった一人の父にもほとんど構ってもらえなくて「寂しい」と思うことを、白雪はいつしか、自分に禁じていた。
 ――父上は、わたしだけの父上じゃないから。
 ――巫女姫さまのために。身体と魂を削って戦いつづけて。
 ――そして、みなの信頼と尊敬を得ているんだから。
 寂しいなんて、そんな風に思ってはいけないのだと。
 父上ともっと一緒にいたければ、わたしが父上のそばにいられるように努力すればいい。そうするしかない。誰よりも敬愛する父からひと言褒めてもらいたくて、白雪は自分から忍びの修練に打ちこんできた。
 結局……未熟すぎて、褒めてもらえたことはなかったけれど。
(でも、こんなことになるなら、もっとお話してみたかったな……)
 たぶん永遠に逢えなくなった今になって思う。亡骸を見た記憶はないけれど、.父が生きているかもという希望は、持たないようにしていた。
 昔から覚悟だけはあった。父はいつ命を落とすかわからない、危険な、けれど大事なお役目についているのだから。けれどこんなに急に別れが来るとも思っていなかった。白雪の知る父は、誰よりも強い忍びの者だったから。
「……でも――どうして急に、父のことを?」
「…………」
「アレク船長?」
 白雪がひとりで父に思いめぐらすことは多々あっても、それを口にした記憶はないのに。
 不思議に思ってアレクの顔をのぞきこもうとするが、彼の反応はにぶい。
(さっきから、なんか変……?)
 首をかしげる。
 金髪の海賊は、白雪をまともに見ないまま、ぽつりと言った。
「それよりもだな白雪。いくらおまえが14歳くらいにしか見えないしボリュームもない身体でも、そこまで押しつけられると正直困るぞ」
 ――妙にぼかした言いようだったので、しばらく意味をつかみそこねた。
 少しして、自分がいつのまにかアレクの頭を胸にぎゅっと抱えこむような体勢をとっていたことに気がつき、白雪の頬がかっと熱を帯びた。何かを考えるよりも先に、固めた拳をアレクの脳天に振り下ろしていた。
「痛ぇ! おまえ今、本気で殴ったな!?」
「当然です! さっさと下ろしてください、もう用事は済んだんでしょう!?」
「済んだっちゃ済んだけど――やっぱり、しばらくこのままでもいいぞ。ちょっと物足りないが、悪い感触じゃなかったし」
「か、感触って……! あなたはどこまで最低なんですか!」
 白雪は振りほどくようにして、無理やり甲板に下りた。
「悪い感触じゃないって褒めてやったのに、切れるなよ」
「それは褒め言葉じゃありません!」
 最低! 海に落ちてしまえ! とばかりに、発言がいちいち変態な海賊をぼかぼか殴る蹴るしてつけていると、ふっと背後に気配を感じた。と同時に、くい、とシャツを引っ張られる感触がして、白雪がなんだろうと振り返ると――
「うなー」
 ――猫。
 やけに大柄な黒猫が、白雪のシャツの裾を、くいくいと引っ張っていた。
「うなー、うなー?」
 黒猫は「そんなに殴らないであげて」「怒っちゃイヤよ」と下がり眉で訴えるみたいに、可愛く鳴いている。白雪は毒気を抜かれて、握り締めていた拳から力を抜いた。というか、力が抜けてしまった。
 しかし改めて見ると――ただの黒猫ではない。
 全体的には黒猫としか言いようがないのだが、猫にしてはちょっと耳が長めだし、それより何より長靴をはいて二足歩行しているのに、白雪は目を疑った。5匹で群れている彼らは、一番小さいものでも白雪の腰くらいまで背丈がある。豊かな毛並みは黒ではなく、黒に近い深緑色だということを、遅れて発見した。
(い……異国の生き物、なのかな?)
 あきらかに、普通の猫ではない。そして猫たちの後方には、一人の人間が立っている。
 白雪は目をみはった。
「って――フィロさん?」
 昨日紹介された、白雪と同じ17歳の船員だ。フィロは愛称で、正式には、フィローズ・マリク・ビン=ハイレディン。
 アレクからもらった航海日誌用のノートに書いて、何回も朗読して暗記したから、長い名前でもどうにか覚えていた。
 無造作に束ねた髪の流れは黒蜜のようで、瞳はめずらしい紅玉石の色。
 アレクとも白雪とも違う国で生まれた、独特のエキゾチックな妖艶さのある美少年は、無表情にこちらを見つめていた。別に睨まれているわけではないのだが、妙に威圧感があって、白雪はつい視線をずらしてしまう。
 やや気まずい雰囲気の少年少女をよそに、アレクは猫たちに陽気に声をかけていた。
「よう、ケット=シーども。今日は」
「けっとし……?」
「妖精、つったらわかるか?」
 白雪はかぶりを振った。初めて聞く単語だ。アレクは「あー」と顎をかく。
「説明しにくいんだが――動物とか人に似た形をしてるけどそうじゃない、ちょっと不思議な力を持ってる生き物って、おまえの国にもいないか?」
「あ、それなら……」
 異国語でなんと呼ぶのかは知らないが、母国では妖怪やもののけと呼ばれているモノたちが頭に浮かんだ。
「でも、どうしてそんな生き物が海賊船なんかにいるんですか――……あ、もしかして、よその国に高値で売るとか?」
「ばか。そんな奴隷貿易みたいな真似はしねえよ。こいつらは俺の友達だ。船の仕事を手伝ってくれる、いい奴らだぞ」
「…………ともだち……?」
 白雪はなんとも言えない顔になった。目つきもガラも口も悪いアレクに、こんなに可愛くて純真な動物は似合わない。
「まさか、わたしにしたみたいに、脅しつけて友達にしたとか」
「おまえな……。そろそろつねるぞ」
 正直な感想をもらした白雪に、アレクが半眼でつっこんだとき。
「うなー」
 喧嘩はだめよー、と言われた気がして、白雪はケット=シーたちを振り返った。
「なー……? うなー」
 五匹分の金色の瞳が、白雪を一心に見上げている。
 朧姫がときどき、どこからか珍妙な妖怪その他を拾ってきては、神宮で愛玩していたことを思い出す(女官たちは怯えたので、世話を手伝うのはもっぱら白雪だった)。このケット=シーとやらは、さしずめ、白雪の国でいう「化け猫」だろうか?
 でも、化け猫と違って、不気味なところはない。むしろ、全身全霊で撫でくり回したくなるほど可愛い。
(な……撫でてもいいかな?)
 つい手がわきわきとしてしまう。
 白雪がもうカッカしていないことを確認したケット=シーたちは、彼女にいっせいにじゃれついてきた。緑がかった黒のもふもふに包囲され、白雪はその毛並みの素晴らしいさわり心地にうっとりしてしまった。なんだこれはたまらん。
「うなー」「なーなー」「うななー!」
「あ、はい。わたしは白雪です。よろしくお願いします……?」
 語尾に「?」がついたのは、ケット=シーたちに言葉は通じるのかと、今さら疑問に感じたからだ。大きさ以外は完全に猫っぽいが、妙に人間くさい仕草や表情をするので、完全な愛玩動物扱いというのはしにくい。
(船長の言うとおり、友達みたいに接するのが、一番いいのかな?)
 無邪気な猫妖精たちと向き合ってまじめに頭を悩ませる白雪を後目に、アレクは凄まじく愛想のない少年船乗りへと目線を流した。
「で。ケット=シーどもはいいとして、フィロ、おまえはなんか用か?」
 おまえは用もないのに寄ってくる趣味はないよな? と言外ににおわせている。
 フィロは抑揚のない声で答えた。
「昨日の命令」
「……って、もしかしてこいつを迎えにきてくれたのか?」
 こいつ、のところで、アレクは白雪の頭にぽんと手を置いた。
 白雪がもふもふを抱きながら顔を上げると、フィロが無表情にうなずくのが見えた。
 すると、アレクの片頬に、お得意の人の悪そうな笑みがのる。
「おまえにしちゃマメだな。正直、そこまでしてくれるとは思わなかったぜ? 人見知りのくせに」
「命令だから」
 フィロは言葉少なに首肯した。気は進まないけど仕方なく来たのだと主張しているようだ。
 少し意地を張っているように見えるその態度を、アレクがさらにつつく前に、フィロは素早く言葉を続けた。
「副長から伝言。『グラティザンでの交易について相談したいから、作戦室に集合』」
「バージルか。わかった」
「クリス先生からも伝言。『二人きりで相談したいことがあるので、医務室に来てください』」
「……クリス先生が? なんだ、やたら深刻そうだな。伝染病でも出たのかよ」
「知らない」
 おれは伝言を頼まれただけだから、詳しい内容までは知らない。――を、必要最低限の単語でフィロは表現した。
 そういう意味ありげな呼び出しは少なくないのか、ただ単にフィロの愛想のなさに慣れているだけなのか。アレクは特に動じることなく、悠然とうなずいている。
「じゃ、うちのキャビンボーイは、午後までおまえに預けとくぜ」
「了解」
 白雪が口を挟む余地は、当然のようにない。
「じゃ、がんばれよ、新入り」
 ぽん、と頭に手を置かれて、白雪はアレクを振り仰ぐ。
 目が合うと、金髪の船長は軽く身をかがめ、白雪の耳元でごく小さな声で囁いた。
「――なんかあったら、船長室に逃げこめ。いいな?」
「! はい」
 思いがけない言葉に、胸が温かくなる。
 元気よくうなずいたものの、やはり心細さはあって。
 アレクが船内へと立ち去る姿を目で追っていると、突然襟首をつかまれた。
 びっくりして振り返ると、フィロがいつのまにかすぐそこにいた。感情のない目が白雪を見下ろしている。
「――うわ!?」
 なんだろう? と思っていたら、そのまま荷物のように無造作に引っ張っていかれて、白雪はあまりといえばあまりな扱い意狼狽した。わたしは猫か!?
 ケット=シーたちも「まあ大変!」とでも言いたげな表情で、白雪たちを追いかけてくる。
(なんなんだこの人!?)
 白雪はたまらず、彼女を淡々と引っ張っていく手の主に、大きめの声を上げた。
「ちょッ、フィロさん! 歩けます! 普通に歩きますから、離してくれませんか!?」
「…………」
 するとフィロは、ぱっと手を離してくれた。思ったより、あっけなく。
 よろめいた白雪を一瞬だけ見下ろした紅玉石の瞳には、なんの気遣いの色もない。
 さりとて悪意もないので、彼が何を思っていきなり手荒な扱いをしたのかが、さっぱりわからなかった。
(新人いじめとかではないみたいだけど……うーん……読めないなあ)
 事務的で、機械的で。
 神秘的といえば聞こえはいいが、正直意味不明だ。  今朝の王子様――ヴィンスのように積極的に働きかけられるのも、女だとバレやしないかハラハラするが、ここまで無関心でそっけなくされるのも、逆の意味で厄介な気がする。仕事をするにも、白雪は海上生活なんてわからないことだらけなのに、質問がしにくいではないか。
 それでも勇気をふりしぼって、白雪はフィロの背中に声をかけた。
「あの……ところで、どこに行くんですか?」
「準備」
 振り返るどころか、船尾へと向かう歩調をゆるめもせずに、フィロ。
「……って、なんの?」
「朝食前の仕事」
「朝食前の仕事っていうのは、一体なんなんですか?」
 いっこうに要領を得ないので不安げに訊ねた白雪に、フィロはやはり振り返ることなく、最低限の言葉で答える。
甲板みがき[ストーン・プレイヤー]
 そしてそれが一体どういう仕事なのかをフィロから聞き出すまで、白雪はさらに数倍の苦労をしたのだった。



2009.11.27. up.

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